Ingarden 1963

  • Roman Ingarden, "Die wissenschaftliche Tätigkeit Kasimir Twardowskis," 1963.

ポーランド語論文の独訳。Zur Lehre vom Inhalt und Gegenstand der Vorstellungenについてのくだりが面白い。さすが直弟子だけあって、後の解釈者に見逃されがちなポイントをきっちりと押さえている。
インガルデンの叙述を読んで思ったことを少しだけ。表象(作用)についてのヴァルドフスキの議論は、心的現象の背後にある原因の存在や本性の問題に関して中立的であるとされる。こうした考えは、いうまでもなくブレンターの深い影響下にある。しかしトヴァルドフスキが(『経験的立場からの心理学』の)ブレンターノと異なる点が一つあって、それは、彼が作用の内容と対象の区別を明確に付けているということである。ブレンターノの場合、表象の内容と対象は、「表象された対象 vorgestellter Gegenstand」という言い方の二義性によって一緒くたにされてしまい、その結果もっぱら作用に内在的な対象(つまり、内容)だけが記述的心理学の考察対象とされている。別の言い方をすれば、ブレンターノにとって、作用を超越した対象は、記述的心理学の守備範囲外にある。だが、対象一般についてのトヴァルドフスキの理論(この理論はマイノングの対象論の先駆となり、フッサールの『論研』第三研究とも深い類縁性を見せる)は、インガルデン自身が指摘するように、この区別によって導入される。この点もインガルデンがしっかり指摘しているのだが、トヴァルドフスキは、対象論にたどり着くことによって、ブレンターノ的な記述的心理学の範囲を超え出てしまっている。しかし、そこから先には微妙な問題がある。ブレンターノ的な記述的心理学を超えて超越的対象の理論へと到達したトヴァルドフスキは、心的現象の原因がそこに含まれるような因果的世界についての探究に足を踏み入れたのだろうか。それとも、彼は記述的心理学の守備範囲を拡張しただけであって、対象論もまた、因果的世界についての探究に対する独立性を保つと考えたのだろうか。インガルデンはこの辺についてははっきりと書いていないけど、後者の解釈に傾いているようにも読める。そして、Zur Lehreを検討してみると、それがもっともな気もする。しかしそうすると、トヴァルドフスキが自分の理論を(スコラ哲学についてのそれなりに立ち入った言及をわざわざしたうえで)「形而上学」と呼んでいることが若干不可解になってしまう。とりあえず、この問題について再論しているらしいので、インガルデンの1966年の論文を読むか。