翻訳の仕事をしました

久しぶりの更新が宣伝というのもアレですが、ここを見てくださっている方には耳寄りな情報ではないかと思うので、お伝えいたします。青土社の『現代思想』がフッサールを特集した増刊号が出ました。私も翻訳者としてお手伝いさせていただきました。二本の論…

第二章が膨らんでいる

一月くらい放置してしまった。博論執筆はといえば、いまだ『論研』の周辺でうろうろしている。しかし、長い時間をかけたおかげか、『論研』を統一的な著作として読む自分の解釈が一段階深まったような気がする。『論研』の第一巻と第二巻はいわば分業体制の…

Hanna 2008, De Palma 2008

Robert Hanna, "Husserl's Arguments against Logical Psychologism (Prolegomena §§ 17 - 61)," 2008.*1 Vittorio De Palma "Husserls phänomenologische Semiotik," 2008. 『論研』関連の二次文献調査。どちらも、Klassiker Auslegenシリーズの『論研』の…

第二章

博論を書くために何を調べたかだけでなく、実際に何をどれくらい書いたのかについても記録すればいいのに、という要望がとある方面から寄せられた。というわけで、大雑把ではあるが、ここ最近の流れを記してみる。

Husserl, Hua. Mat. III & Lavigne 2005

Edmund Husserl, Allgemeine Erkenntnistheorie. Jean-François Lavigne, Husserl et la naissance de la phénoménologie (1900-1913). 博論作業。1902/03年講義をこつこつと消化中。併せてLavigneの例の分厚い本の該当箇所も読む。この時期のフッサールが『…

Pfänder 1963/2000

Alexander Pfänder, Logik, 1963/2000. 博論作業をやるという気分ではないので平行してやっているプロジェクトの方を。実在論的現象学の古典の一つであるプフェンダーの論理学本(初版1921年)の第一部と第二部をおよそ七割ほど読む。論理学の本といっても、…

Bernet 2004

Rudolf Bernet Conscience et existence, 2004, pt. 1, ch. 1. 平行して博論用作業。第二章の準備のためにベルネット本の最初の章を再読する。『論研』第一巻で表明されている立場はもっぱら論理学の対象に関するプラトニズムであるという皮相な解釈に抗して…

Lewis 1986

David Lewis, On the Plurality of Worlds, 1986, 1.7-9. ちょっと前から始まっていた勉強会の担当が回ってきたので準備のために読む。ルイスの様相実在論はより正確にはどのように描写されるのか、ということが問題にされる箇所なので、基本的に誰も積極的…

第三章の先取り

Edmund Husserl Allgemeine Erkenntnistheorie. Vorlesung 1902/03. 博論では第三章で扱う文献を最初から読み始める。『論研』のフッサールが認識論ということで考えていたのは何かというのは実はそれほど明らかではないけど、この辺の講義を読むとだいぶは…

Ierna 2008

Carlo Ierna "Husserl's Critique of Double Judgements" 博論の作業がやや行き詰まっているので、あまり関係ない(けどまったく関係がないわけではない)ものを読む。後期ブレンターノの二重判断論に対するフッサールの批判について。ブレンターノ学派の文…

『論研』関連文献

第二章のための読書のつづき。 Dan Zahavi, Intentionalität und Konstitution, chs. 4-8. Denis Seron, "Le sujet est-il un objet? La controverse Husserl-Natorp sur le parallélisme noético-noématique." ザハヴィ本を読了。折にふれてつまみ食いする…

第一章と第二章

第一章の執筆が思いのほか難航する。フッサールの主張にあいまいさが残っていることをまさにそのようなことととして明確化するという作業は、あいまいな主張を明確にすることよりもずっと難しい。平行して第一章および『論研』を扱う第二章の準備として以下…

第一章

博論の第一章のための調べ物として、ここ数日で Edmund Husserl, "Erkenntnistheorie und Hauptpunkte der Metaphysik" Edmund Husserl, "Intentionale Gegenstände" Bernard Bolzano, Wissenschaftslehre Franz Brentano, Psychologie vom empirichen Stand…

博論執筆開始

しばらく香港に行ってきて帰ってきたあと、博士論文の構想発表の準備をして無事終わらせた。というわけで、この夏はひたすら書き書くために読むことで終わると思う。というか夏のうちに初稿を終わらせたい。今日は第一章のアウトラインを作った。ここで使う…

Moran 2007

Dermot Moran, "Fink's Speculative Phenomenology: Between Construction and Transcendence," 2007. Bruzina本の書評といって差し支えない内容。この本の重要性を評価しつつも、辛辣なコメントが随所で挿入される。たとえば、これ: There is no doubt tha…

Bruzina 2004

Ronald Bruzina Edmund Husserl and Eugen Fink. Beginnings and Ends in Phenomenology 1928-1938, 2004, chs. 1-2. 今月末からの集中講義のために読み始める。フッサール晩年におけるフィンクとの共同作業の経緯を追った第一章がかなり良い。『存在と時間…

Husserl, Hua XXVI, Beilage XIX

Edmund Husserl, "Das Problem der Idealität der Bedeutung," 1911. ちょっと前に読み終わる。心的内容の個別化に関する内在主義に対して、パトナムの双子地球論法のさきがけと言えなくもない論法*1で批判を加え、内在主義的な立場を要請するスペチエス説を…

Husserl, Hua XXVI, Beilage XVIII

Edmund Husserl, "Das Urteil und die Urteilsidee," 1910. 1910年秋に執筆された草稿。修論を書いていたときは、この草稿でもフッサールは命題のスペチエス説に舞い戻ってしまうと見なしていたが、これは完全な誤読だった。フッサールはすでにスペチエス説…

Husserl, Hua XXVI, Beilage XVII

Edmund Husserl, "Das Urteil im Unterschied zum Urteilen" (15.9.1910) 1910年9月15日に執筆された草稿。『論研』で提唱された命題のスペチエス説にあの手この手で反論を加えつつも、結局そこに戻っていってしまうふらふらした草稿。この頃までのフッサー…

Husserl, Hua XXVI, Beilage XIII-XVI

Edmund Husserl, "1) Erscheinung, 2) Sinn, 3) Bedeutung=gegenständliche Beziehung," wohl 1909. Edmund Husserl,"Ontische Bedeutung in der Sphäre der Wahrnehmungen und der schlichten Anschauungen," 1908. Edmund Husserl, "Die Möglichkeit der S…

Husserl, Hua XXVI, Beilage XII

Edmund Husserl, "Sachverhalt---Sachlage---Propositionale," 1908(?). もろもろの業務がようやく終わったので、1908年のものとされる草稿を全訳しつつ読む。たとえば「a>b」・「b*1は何かという話から始まって、確定記述の用法の区別に酷似した話*2だとか…

読み散らかし

Iso Kern, Husserl und Kant, 1964. Rebecca Paimann, Formale Strukturen der Subjektivität, 2002 A. D. Smith, Husserl and the Cartesian Meditations, 2003. 年度の頭は細切れにしか時間が取れないので、自分の研究は目下棚上げ中。例の書類を書かなけ…

さらに読み散らかし

Mary Harnett, "The Aproach to the Problem of God in Husserl's Thinking," 2000. Smith本の形而上学の箇所を読んでいると、やはり神の位置づけが気になるので、ちょっと前にダウンロードしていた論文を読む。私見では、神についてのフッサールの見解とい…

Sokolowski (forthcoming)

Robert Sokolowski, "Review of J. N. Mohanty. The Philosophy of Edmund Husserl: A Historical Development," forthcoming. Husserl Studiesに載る予定の書評がOnline Firstに出てたので読む(本当はMohantyの本そのものを読む必要があるのだけど)。ノエ…

Husserl, Hua. Mat. II

Edmund Husserl, Logik. Vorlesung 1902/03, Kluwer 2001. 某論文の準備も再始動させるべく、とりあえず実践的学科としての論理学に関する調べものから始める。(少なくとも『論研』やこの時期の)フッサールは、理論学としての論理学の基礎にとってわれわれ…

Wood 2005

Allen Wood, Kant, Blackwell, 2005, ch. 2. 今年度のカントゼミの準備もそろそろしておこうということで、第一章を読んだきりのWood本を読み始める。「伝統的形而上学と新しい自然科学との調停を試みる、最後の近世哲学者としてのカント」という描像を一貫…

Mayer 2009

Verena Mayer Edmund Husserl, C.H. Beck, 2009. 届いたので拾い読み。『論研』を各研究ごとに丁寧に扱いつつも、構成だとか生活世界だとかいった中期・後期の議論についても明快な描像を与え、さらに倫理学方面の話まできちんと押さえてあるのに200ペー…

Husserl, Hua. XXVI

ここ数日かけて、 Edmund Husserl Vorlesungen über Bedeutungslehre, Beilage I-IV. を訳しながら読む。あらためて丁寧に検討してみると、命題と事態の身分をめぐってフッサールがいろいろ悩んでいるのがよく分かって面白い。命題を事態と同一視する作戦と…

マイノング全集を買った

全七巻と補巻一巻の揃いで税込六万円というお値打価格。勢いで購入したが後悔していない。

Husserl, Hua. XXXVI

Edmund Husserl Transzendentaler Idealismus, Nr. 7. 1914年か15年の草稿。前半部分を読む。6番までのテクストとは違って、世界内に身体を持つ主観の役割が強調されはじめるのだけど、現実世界の構成分析において身体を持った主観が欠かせないという結論を…