Crane 2001

  • Tim Crane, "Intentional Objects," 2001.

志向性理論にとって志向的対象がなしで済ませることのできないものであることを論じつつも、志向的対象を認めることによって登場するジレンマ(「存在しない対象が存在する」と「存在しない対象についての志向的状態を否定する」という、受け入れがたい主張のどちらかを帰結として受け入れなければならない)を回避する試み。論点はクリアだし面白いのけど、議論の鍵になっている、「図式的な対象概念」がどういうものなのかが、いまいち飲み込めなかった。「志向的対象」と言われるときの「対象」は、「目が見えない人の世界」と言われるときの「世界」と同じであり、したがって、そのような対象があるといわれるときに、存在論的な考察の対象になるような何かのことが意味されているわけではない、というのがその説明なのだけど、これでは何か喰い足りないという気分になってしまう。志向的対象についての(しかも非マイノング主義的な)存在論をなんとか構築したいという気持ちをこっちがあらかじめ持っているからだろうか。