Bruzina 2004

  • Ronald Bruzina Edmund Husserl and Eugen Fink. Beginnings and Ends in Phenomenology 1928-1938, 2004, chs. 1-2.

今月末からの集中講義のために読み始める。フッサール晩年におけるフィンクとの共同作業の経緯を追った第一章がかなり良い。『存在と時間』公刊(1927年)以降ドイツ哲学界におけるハイデガーの存在感が増大していくなかで、当時のフッサールがどのように危機感を募らせていたのかが伺われる。20年代のフッサールの思想の発展に関するDon Weltonの仕事と並んで、後期フッサールに関する今後の研究における基礎的な資料の一つだと思う*1

しかし個人的には、フィンクとの出会いはフッサールにとってかならずしも幸福なことではないのではないかとも思えて仕方がない。第二章を導くフィンクの問題意識(純粋意識ないし超越論的主観性の存在論的身分が明らかにされなければいけない)には共感するのだけど、そこで「脱人間化 Entmenschung」というよく分からないけど凄そうな言葉を鍵にして反省論を始めてしまう発想にはやはりついていけない。フッサール現象学を(当時の)心理学に属する用語法(意識とか作用とか)で展開したということに異存はない。けれども、そうした語法の選択は果たして適切であったのかということをここで問題にすべきだったのではないか。

*1:個人的には、こうした新しい成果を踏まえてその上になにかを積み重ねるという作業をしないフッサール研究が今後出てきても、あまり読みたくない。