Chrudzimski 2008

  • Arkadiusz Chrudzimski. "Truth, Concept Empiricism, and the Realism of Polish Phenomenology." 2008.

フッサールが明証説な真理概念を採用し、その自然な帰結として(超越論的)観念論へと辿りついたのに対して、フッサールの観念論に終始反対し続けたインガルデンは、対応説的な真理観を保持し続けた。こうした事情は、ポーランド現象学派に多大な影響を与えているのだけど、こうした実在論的傾向の源泉は、この学派がインガルデンに始まるという事実だけでなく、哲学的・理論的な事情にも求められる。それは、タルスキ(1933)による真理定義であり、これは、部分的にではあれ*1、おそらくインガルデン自身にも影響を与えている*2。分量上の制約からかあまり突っ込んだ話が出てこないけど、なかなか考えさせられるところも多い。あと、フッサールの真理概念の先駆者はとうぜんブレンターノであるわけだけど、真理の明証説は彼の哲学全体の中で決して収まりのいいものではない(実在論的な姿勢と相性が悪い)ということが明言されていて安心した。やっぱそうだよな。

*1:もう一つ、マイノングの真理概念が挙げられるのだけど、インガルデンにとってより重要なのは、ライナッハではないかと思う。

*2:同論文の元になった口答発表にはインガルデンも立ち会っていたことが確認できる。