Lewis 1986

  • David Lewis, On the Plurality of Worlds, 1986, 1.7-9.

ちょっと前から始まっていた勉強会の担当が回ってきたので準備のために読む。ルイスの様相実在論はより正確にはどのように描写されるのか、ということが問題にされる箇所なので、基本的に誰も積極的に信じたいとは思わない例の立場についての素敵な話が続く。

第三章の先取り

  • Edmund Husserl Allgemeine Erkenntnistheorie. Vorlesung 1902/03.

博論では第三章で扱う文献を最初から読み始める。『論研』のフッサールが認識論ということで考えていたのは何かというのは実はそれほど明らかではないけど、この辺の講義を読むとだいぶはっきりしてくる。のだけど、それでもどこか輪郭のぼけた理解しか持てないのは、自分のせいなのか、それともフッサール先生の講義の腕のせいなのか。

Ierna 2008

  • Carlo Ierna "Husserl's Critique of Double Judgements"

博論の作業がやや行き詰まっているので、あまり関係ない(けどまったく関係がないわけではない)ものを読む。後期ブレンターノの二重判断論に対するフッサールの批判について。ブレンターノ学派の文脈における(初期)フッサールという主題に関してはやるべきことが山ほど残っていて、この論文もそういうやるべきことをきちんとやっているいい論文。

『論研』関連文献

第二章のための読書のつづき。

  • Dan Zahavi, Intentionalität und Konstitution, chs. 4-8.
  • Denis Seron, "Le sujet est-il un objet? La controverse Husserl-Natorp sur le parallélisme noético-noématique."

ザハヴィ本を読了。折にふれてつまみ食いすることでほぼすべての箇所を読んでいたとはいえ、通読するのはこれがはじめて。『論研』の基本的な読み方については大筋で賛成なんだけど、現象学形而上学的中立性テーゼの再定式化や評価に関してはいろいろ疑問もあるし、志向性理論のところはもっと細かくやらないといけないと思う。が、これはいい本。スロンの論文*1は、第五研究第八節絡みで読んでみたけど、そのあたりを突っ込んで論じるものではなかった。が、ナトルプの考えが簡潔にまとまっているので良い。

*1:というかどっかでやった発表の原稿らしい。次から入手可能。http://www.pheno.ulg.ac.be/perso/seron/

第一章と第二章

第一章の執筆が思いのほか難航する。フッサールの主張にあいまいさが残っていることをまさにそのようなことととして明確化するという作業は、あいまいな主張を明確にすることよりもずっと難しい。平行して第一章および『論研』を扱う第二章の準備として以下を読む。

  • Karl Schuhmann, "Intentionalität und intentionaler Gegenstand beim frühen Husserl"
  • Barry Smith, "Logic and Formal Ontology"
  • Dan Zahavi, Intentionalität und Konstitution, chs. 1-3.

Schuhmannの論文は文献学的な情報以外は余り期待しないで読んだけど、これがなかなか面白かった。やたらに長いSmith論文は、これまでに読んだことのある論文と異なる論点はとりあえず見つからなかった。『論研』の参照と引用が豊富なので第二章を書くときに助かりそう。最初から通して読んだことがなかったZahavi本は、通読しようかどうか決めるために最初を読んでいたらいたらあっというまに第三章の終わりまで来た。これはいい本だとあらためて思う。

第一章

博論の第一章のための調べ物として、ここ数日で

  • Edmund Husserl, "Erkenntnistheorie und Hauptpunkte der Metaphysik"
  • Edmund Husserl, "Intentionale Gegenstände"
  • Bernard Bolzano, Wissenschaftslehre
  • Franz Brentano, Psychologie vom empirichen Standpunkt
  • Herman Phillipse "The Concept of Intentionality : Husserl's Development from the Brentano Period to the Logical Investigations"
  • Carlo Ierna "The Beginnings of Husserl's Philosophy" Part1, Part2

を拾い読みする。『論研』公刊直前のフッサールのテクストの検討を通じて同書の背景をなす問題を導入しつつ、そうした問題設定がいかにボルツァーノとブレンターノ(学派)の影響下にあるのかを示したいのだけど、それをきちんとやるためにはまだまだ作業が必要なことが分かった*1。しかし逆に言えば、ここを丁寧に書いてしまえば後が楽になるはず。Phillipse論文*2は、『論研』以前の志向性理論とその背景についての概略を得るのに非常に良い。Ierna論文は、『算哲』前後から話を始めようかどうかという迷いを断ち切るために読む。ここからはじめていたら博論の中にちょっとした修論をもう一本書く羽目になりそうなのでやめておこう。

*1:とりあえずStumpfの"Psychologie und Erkenntnistheorie"を読まなければならないし、ボルツァーノに関する二次文献をもう少し調べる必要もある。

*2:ダメットと共催した『論研』についてのセミナーで読み上げられたもので、ダメットの『分析哲学の起源』でも参照されている。長らく入手困難だったけど、比較的最近になってオンラインで入手できるようになった(のを発見した)。http://igitur-archive.library.uu.nl/ph/2005-0622-184530/UUindex.html

博論執筆開始

しばらく香港に行ってきて帰ってきたあと、博士論文の構想発表の準備をして無事終わらせた。というわけで、この夏はひたすら書き書くために読むことで終わると思う。というか夏のうちに初稿を終わらせたい。今日は第一章のアウトラインを作った。ここで使う一次文献のうち未読だった、

の冒頭部分を全部読む。プロレゴメナの原型のような箇所で、その後に続く主要部分でのボルツァーノのサーヴェイ(+α)への導入になっている。主要部分については数年前に勉強会をやっているので*1、この講義はすべて押さえたことになる。

*1:しかしまあ、ひたすら(ときにポイントの分からない)分類を導入しているだけのあの講義を、二年以上にわたってよく読み終えたものだ。いろいろと懐かしい勉強会。